サンタクロースに恋をした
「ねえ、安藤包丁使ったことある?!」
「あるよ! …………1度くらいは、多分」

 彼は僕以上に不器用で、さつまいもを半分切るのにも手こずっている。

 それより、やっぱり彼女は彼といる時は溌剌としていて、僕と2人きりの時よりも断然口数が多い。

 やっぱり、同じ学年というだけで距離は当然近くなる。その分、僕の立場は不利になる。

「2人って、仲良いね」

 無理矢理会話に入ろうとする自分に、笑えてくる。余裕がない自分は、なんだかかっこ悪い。

「隣の席なんすよ。だから、自然と話す回数も増えるし、それにもう好きだって伝えてるから、遠慮する必要もないし」

 彼は凄い。頭の中でいろいろと考えてなかなか行動に移せない僕とは違って、彼は前を向いている。

 行動力の差は歴然だ。

「まあ、それでも平川は振り向いてくれないんですけどね」
「ちょ、ちょっと。それ以上はいいから」
「那美ちゃんは…………好きな人いるの?」

 あまりにも2人の仲が良くて、それを見ているとだんだんと余裕が無くなってきて、どうにかして僕の方を見て欲しくて、気を引く質問を投げかけた。

「え、えっと…………。いますよ」
「あ……いるんだ……」

 それは誰? まさか隣にいるやつ?

 気になるけど、質問攻めをしてしまったら自分の気持ちがバレてしまいそうな気がして、ぐっと言葉を飲みこむ。

「あのう、話してるところすみません……この後は何をすれば?」
「あ、ごめんごめん。えっとね、さつまいもを電子レンジで柔らかくして裏ごしするの。これ使って」
「了解」

 そういえば、スイートポテトを作ってたんだ。つい2人に気を取られていて、本来の作業を忘れていた。


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