【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
「……お客さま、申し訳ございません。退室後、改めてお掃除に参ります」

私はひりつく喉をなんとか動かし、声を絞り出した。

「莉帆!」

悲痛な声で私を呼ぶいっちゃんを、力任せに振り払う。すぐさま追いかけてくる彼を、「来ないで!」と頑なに拒み、その場から逃げ出した。足がもつれそうになりながら、バックヤードを目指す。

二年前、私はいっちゃんへの気持ちを胸の奥底に仕舞い込み、二度と夢なんて見ないと誓ったのだ。

現実に期待なんてしちゃいけない。

彼との身分の差は、私がどれだけ足掻いても縮まらない。


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