崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 アイリスはそこに現れたレオナルドにぺこりとお辞儀をした。
 レオナルドは日に一回、必ず自身の相棒であるワイバーン──ザイルの様子を見に来る。

 ワイバーンは一見すると全部同じように見えるが、よく見ると一匹一匹で個性が違う。
 ザイルは全身をグレーの鱗で覆われた厳つい雰囲気の子だ。一方、例えば外務長官をしているフリージのワイバーン──ショコラは全身を赤茶色の鱗で覆われており、主に似て顔つきもどこか優しげだった。
 
「それもあるがお前に用事がある」
「私に?」
「今日の午前中、魔道士が来ただろう? どうだった?」

 確かにレオナルドの言うとおり、今日の午前中に珍しくふらりと魔道士が来た。
 魔道士とは魔法を使いこなせる者の総称で、魔法がないハイランダ帝国においては全員がリリアナ妃の故郷であるサジャール国から派遣されている。
 主に、ワイバーンに乗りこなす方法を教えたり、魔法の手助けが必要なときの対応をしている。
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