崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「シレック=コスタ。お前のことは既に調べがついている。財産と爵位目当てにコスタ子爵家の女主人を事故に見せかけて殺し、後見人という大義名分でコスタ子爵家の財産を食い潰した。更には現コスタ子爵家当主であるディーン=コスタを病死に見せかけて毒殺しようとした。違うか?」

 信じたくないような事実を、レオナルドは淡々と告げる。
 アイリスはただただ呆然とシレックを見下ろした。
 こんな嫌な叔父でも、亡き父と血を分けた兄弟なのだ。最低な人だと知りながらも、どこかで信じていたいと思う自分がいた。

「……叔父様はディーンを殺そうとしていたのですか?」
「うぐっ」

 地面に押しつけられたシレックは苦しそうな呻き声を漏らす。

「答えて! ディーンを殺そうとしたの!? それに、お母様も!」

 怒りに任せて剣を抜こうとすると、その手をガシリと掴まれた。

「やめろ。我が国では私刑は許されない」

 血が止まりそうなほどに手首を力強く押さえられ、手からカランと剣が落ちる。

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