崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 コスタ家はハイランダ帝国では有名な騎士家系であり、代々騎士家系であれば皇都騎士団にも簡単に入団が可能だ。先代のコスタ子爵は近衛騎士隊の隊長を務めたほどの男で、レオナルドも幼いころに指南を仰いだ記憶がある。

 ──コスタ家か……。

 長身で引き締まった体躯の男が脳裏に浮かぶ。レオナルドの知るコスタ子爵はいかにも軍人といった風情の豪傑だった。
 その息子が小さく細いとは意外だ。残念ながら、体格は母親に似たのかもしれない。

 目的の場所である騎士隊の訓練場に行くと、初々しい面々が真新しい黒色の制服に身を包んで集合していた。
 前後左右等間隔に並び、一糸の乱れもなく整列している。全員が今訓示を行っている師団長に注目していた。

 訓練場の片隅に立ちその面々にざっと視線を走らせていたレオナルドは、ふと一人の団員に目を留めた。いるはずのない人物を見つけたのだ。

< 64 / 300 >

この作品をシェア

pagetop