狼くん、ふれるなキケン!



「ひな」




さっきより少し大きい声で呼んでみるけれど。



だめだ、起きない。
瞼が上がる気配すらない。



なんでこんなところでここまでぐっすり寝れるわけ。

しかも、髪も濡れっぱなし。



はー……と無意識にため息がこぼれていく。

呆れている。



ありえないくらい警戒心ゼロのひなにも、それからその気なんて少しもないひなにまんまと手のひらの上で転がされている自分自身にも。





「風邪ひかれたら困るんだけど」





俺の親にでもなったつもりなのか、健康にわるいだのなんだの口うるさいくせに、自分はどうなのって話。


ひとのことばっかり気にしてるけど、ひなだって大して強くないって、知ってる。




幼かったからっていうのもあるだろうけれど、傘をもたずに雨に降られた日にはかならず熱を出していた気がする。

まだ気温もそこまで高くない夜に髪の毛を冷たく濡らしたまま寝て、風邪をひかない保証なんてどこにもない。




むしろ、すぐにぶっ倒れそう。





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