狼くん、ふれるなキケン!



愕然とする。

よ、よくもひとが気にしていることを平気で!




「これはっ、くせっ毛なんです! 生まれつき!」

「へー」




そっけない返事がかえってきてうなだれる。


放っておくとぶわわと広がっていく、生まれつきのくせっ毛はちょっとしたコンプレックス。それを指摘しておきながら、狼くんは興味なさげに視線は鏡に一直線。


平然と歯みがきを続ける狼くんにむっと頬をふくらませる。



狼くんのいじわる……っ!





「……!」





そして、少し目を離した隙に、どんな魔法をつかったのか狼くんの芸術的な寝ぐせは跡形もなく消え去っていてびっくりした。


どうやら狼くんは、もともとが直毛だから、ちょっとくしを通しただけで見事な寝ぐせもかんたんにとれてしまうらしい。



そんなの。





「ずるい……うらやましいです……」




ジトッと狼くんを見つめるけれど、当然のようにスルーされてしまった。



だけど、ほんとうにうらやましい。

いいなあ、私は毎朝けっこう時間をかけて、ストレートアイロンをかけるのに。湿気や雨は大敵だ。



いいな……とうらやましく狼くんを眺めながら、せっせとぴょこぴょこ広がる髪の毛をおさえつけていると。




「……くるくる」





思い出したかのように口を開いた狼くん。

私の髪の毛をちらりと見て、そんなことを言う。





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