狼くん、ふれるなキケン!


思わずまじまじと見つめてしまう。



お箸が入れ替わって……?
そんなこと、ふつう、友だち同士で起こりっこないよね……。



きょとんと瞬きを繰り返す間にも、道枝さんはまやくんからお箸を受け取って、何事もなかったかのようにお弁当を広げていた。




「近原さん?」




フリーズした私の顔を道枝さんが心配そうに覗きこむ。

それで、はっと我に返った。




「や、なんでもない、です……っ」

「そう?」




こくこく、と首を縦にふる。


やっぱり道枝さんとまやくんの間には何かあるのかもしれない。

その謎はまったく解けないまま、だけれど。


今はこのままでいいかな、と思う。


変に探りを入れるようなことでもないし、誰しも一つや二つ、ひみつごとというのはあるもの。私が首を突っ込んでいいことかどうかなんてわからないもん。




「そういえば」




卵焼きを箸先で器用につまみながら、道枝さんがふと思い出したように口をひらいた。





< 168 / 352 >

この作品をシェア

pagetop