狼くん、ふれるなキケン!
最低だよ、狼くん。
狼くん……どうして。
どうして、変わっちゃったの。
「……っ、ふ」
涙脆い、なんてことはない。
どちらかといえば我慢強い性分のはず。
それでも、さすがに耐えられなかった。
悔しくて、悲しくて……どうしようもなく、苦しい。
行き場をなくした感情が涙に変わって、ほろりと落ちていく。
「っ、」
唇を噛みしめて声を押し殺す。
それでも狼くんはわかっていたはずだ、泣いてるって。
だけど、あの頃のように無骨な手が涙を拭って止めてくれることはなくて、それですっかり絶望した。
もう期待なんか、少しも、しない。
「ひな、気が済んだなら出てって」
「……っ、」
『ひぃちゃん』
そう呼んでくれていた、狼くんはもういない。
認めてしまうしかなかった。
10年の月日を経て再会した狼くんは、完全に絶対零度のオオカミに成り代わっていた。