狼くん、ふれるなキケン!



『私、狼くんの部屋に入っちゃだめってことですか?』



部屋に勝手に入ってきてほしくないのも。




『さ、触るのもだめなんですか……っ?』




むやみにふれないでほしいのも、ほんと……誰のためだと思ってるんだろうか。



ぜんぶ、ぜんぶ、最初から、ひなのことしか考えてない。



自信ないんだよ。

ひなが無防備に近づいてきたら、おさえられる自信がまったくない。




『わたしじゃ……、だめですか?』




だめなわけないだろ。



勝手にのこのこ近づいてきて、むかつくくらい平気な顔でひとの心のなかにすべりこんで、踏み荒らしていくひなのこと、かわいくないなんて一度も思えたことがない。たとえ嘘でも、かわいくない、なんて言えない。



そう思えた方が、ひなのこと心底嫌うことができた方が、むしろ何倍も楽だった、ぜったい。





────かわいいと思うから、思ってしまうから、しんどい。






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