狼くん、ふれるなキケン！

「好き」と口にするごとに狼くんの視線が、まとう空気が冷たくなる。

でも、「好き」以外にこの気持ちをあらわせる言葉を知らないから……っ。




「それ、どうせ八木にも同じこと言ってるくせに」

「っ、なんでっ」




なんで、まやくん……？
本気でわからなかった。


戸惑う私には目もくれず、冷水を浴びせるかのごとく、狼くんは乱暴に言葉を投げつけてくる。




「ああ、八木だけじゃなくて桜くんもか。そうやって、誰にでも同じこと言って、たぶらかすんだよな」


「っ！ 言いません……っ！ どうしてそんなこと────」


「事実だろ、ひなの “好き” なんてその程度」




その程度、って。
どのくらいだと思って、言ってるの……？




「っ、狼くんはなんにもわかってないっ！」

「わかってないのはどっちだよ！」




狼くんが声を荒げた。

その気迫におされて、とっさに言い返せずにいると。




「ひなは誰でもよくても俺はよくない。俺はそんな軽い気持ちじゃねーんだよ」




それから狼くんが私を鋭く睨みつけて。

浴びせた言葉は、最低最悪だった。






「くそビッチ」