狼くん、ふれるなキケン!



狼くんが何も言ってこないのをいいことに、じーっとその無感情な表情を見つめ続けてみる。



うう……昔はこんなんじゃなかった。

顔をみれば、狼くんがなにを考えているか、なんてすぐにわかったのに。



そんなことを考えながら、しょうが焼きをまた口に運ぶ。




「ひな」




それは、何の前ぶれもなかったから。
呼ばれた名前に動揺して。




「っっ、ごほっ」




あぶなかった。

思わず咀嚼中のしょうが焼きを喉に詰まらせてしまうところだった。


箸も取り落としてしまうかと。



だって、狼くんが喋ったんだもん……!

驚いて目を見開く。
だって、私とふたりだと、ほんとうに狼くん、口を開いてさえくれない。



それに、やっぱり慣れないな。
"ひな" って呼ばれるの。


いちいち心臓がぴょんと裏返りそうになる。





「狼くん……?」





動揺をおさえつけながら、首を傾げる。



すると、久しぶりに狼くんが私の方をまっすぐ見た。

それで、ふー……と息をついて。





「あとで、ひなの部屋行く」




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