響は謙太郎を唆す

それから、謙太郎の指の隙間から、見たことないような目で謙太郎を真っ直ぐ見上げた。

「聞きたかったのはそれだけ!答えがわかってたのに聞いた」

謙太郎は何も言えなかった。

響の目が真っ直ぐ、信じるとささってくるようだった。
響は、謙太郎の手を掴んだまま起き上がって、謙太郎を正面から見た。

「私、決めた⋯⋯ 」

口にしたら、形になる。
今、決心する。

「正々堂々、外部受験してやる。あんな担任の思惑にすがるような推薦、くそくらえ!」

言ってから響は、出せなかった答えがそれだったと思った。

やっと決心がついた。

謙太郎をちゃんと受け入れられる自分であればいいだけだ。
迷って、怖くて、同じように迷ってる謙太郎から逃げなきゃいけないような自分なんて、最悪。

あんな響の人生に何の関係ない他人に負けて、ダメになってたら、勿体ない。

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