誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


倒れそうになった私を抱きかかえるようにして支えてくれたのは、律さんだった。
フゼアノートの香りが、ふわっと漂う。


「大丈夫か? しっかりしろ」

「ごめんなさい、ちょっと立ちくらみがしただけです」

「顔色も悪い、少し横になった方がいいんじゃないか」

「大丈夫です」

「百花が倒れてしまっては、ハナさんも……」

「律さん、本当に大丈夫ですから」


今は自分の体を労わっている場合じゃないんです。
自分を優先して、後悔するのはもう嫌なの……。

もう1度「大丈夫」と答えた私に、律さんは納得いかない様子だったけれど。
主治医の話を聞くことが先だと、指定された部屋へと急いだ。

その主治医からの説明で、今回の容体悪化は誤嚥性肺炎によるものだと聞かされた。
そして、ハナちゃんにはもう抗がん剤などの治療が難しいこと。
緩和病院へ転院し、残された時間を大切にした方がよいことを強く勧められた。


「転院の手続きは、俺がしておくから百花は家に帰って少し休め」

「いいえ、私はハナちゃんのところに行く」

「そんな顔で行く気か?」


そんな顔って、どんな顔よ。
自分のことなんて、どうだっていいんだってば……!



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