お見合いは未経験
くすりと笑って、榊原は軽く手を上げると、真っ赤になった真奈が軽く頭を下げた。

「あれ?次長、ご存知なんですか?」
「まあ。」
「なかなか、声掛けられないんですけど、可愛いですよねぇ。お嬢様って感じで。」
「ああ。」

やはり、高嶺の花、の方か。

真奈はどうしたら良いのか分からない様子で、自分の席に戻ろうとしている。
「少し、待っていて下さい。」
そう言って、榊原は真奈の方に向かった。

「やあ。」
「貴志、さん。」
戸惑っていても、きちんと名前で呼んでくれるのは嬉しい。

「今日は打ち合わせで。でも、もしかして真奈の顔が見れるかも、と少し思っていたけど。良かった会えて。金曜日はご飯でもどうかな?仕事終わった後に。」
そう言って、榊原は真奈だけを見て微笑んだ。

「はい…。大丈夫です。」
「何が食べたいか、考えといてね。じゃあ、また、連絡するから。」

女性からも、男性からも視線を感じる、が、榊原はこんなことで動じるような神経の持ち主ではない。
まあ、取り敢えず、牽制にはなったかも、と思う。

「すみません、お待たせしまして。」
あっけに取られているメンバーに、榊原は笑顔を返したのだった。
応接で簡単な打ち合わせをしていると、ノックの音がした。

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