お見合いは未経験
「そうですね…。出来れば一緒に来たかったんですけど…。」
「貴志さんはお忙しい方なのよ。わがまま言ってはダメよ?あなたは奥さんになるのだから、これからしっかり支えていかないと。」
キリッと叱られて、真奈は俯いた。

分かってはいるのだ。
「はい。」
ですよね…。

「ドレスはいかがですか?他にも試着されます?」
「そうね…。」

「和装もお召しになりますよね?」
「はい。彼からも色打掛は着て欲しいと言われていて。」

そうなのだ。
貴志からは、結婚式ではどこかのシーンで必ず和服を着て欲しい、と言われている。

それを言ってくれた時、真奈はとても嬉しかった。
あの甘やかな表情で『僕が絶対に真奈の和装が見たいからね。すごく、似合うだろうな…』と言ってくれたのだ。

「分かりますー。きっと、和装の真奈様をご覧になりたいんですよ。」

「だと、いいですけど。ドレスはそちらにします。色味も落ち着いているし。」
「では和装をご案内します。」

先日の結納以来、真奈は少しだけ落ち込みがちだ。

父の突然の爆弾発言。
『事業を譲る』
以前から検討していたとは言っているが…。
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