お見合いは未経験
恐らくは、榊原の様子から察したのだろう、その本気度合いに、成嶋はすぐに納得したような返事を返す。

「まあ、そんな顔すんなよ。オレ、個人的にはお前のこと、本気ですげえやつって思ってるから。そうだな…、今度、彼女とうち来いよ。葵にも言っとくから。他言無用で。」
「家って…」

成嶋のマンションは知っている。
あのマンションに、4人を招くスペースがあるとも思えない。

「お前、来たことないか。そうだよな。同僚はあまり呼ばないからな。車で1時間くらいのとこに家あんだよ。野村先生とか、早瀬先生も来るし、他も助けてくれてるオレの仲間も。賑やかな時もあるけどな。でも、面白いぜ。えっと、来週あたりバーベキューする予定だから、メールする。」

野村先生はもともと顧客の顧問税理士だったそうだが、今やお互いの仕事をサポートする間柄とは噂で聞いている。早瀬先生は弁護士のはずだ。

その人材交流の場が自宅なのだろう、と榊原は察した。

なるほど。人脈をフル活用するとはこういうことか、と榊原も感心する。

あと、お前とは割り勘。5千円ちょうだい。と成嶋に言われた。
榊原は黙って5千円差し出したが、あの店が一人3千円?そんなことはないと思うのだが。

こういうところが、本当に…と思うが、幾らだったか、言え、と言っても成嶋は絶対言わないのだろうから、また今度、なにかの形で返そう、と思う。

そうして、榊原は苦笑した。
なるほど、これが成嶋の掌握術なんだな、と理解したからだ。

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