お見合いは未経験
「うん。僕は業務かと思ったよ。あんなこといつもしてんのかと思ったら、感心した。逆に神経擦り減ったかと思ったね。ほぼ仕事だな。でも、勉強になったよ。成嶋さんと言えども、地道な努力をしていろいろ手に入れてると分かったからね。」

「お勉強…。そうですね。色んな方がいらっしゃいましたもんね。」
「そうだな。」
    
そう、返事をしながら貴志が、はい、と水の入ったペットボトルを渡すと、ありがとうございますと真奈が受け取る。

てくてく、歩きながら、両手で飲んでいる様子が可愛い。
「もしかして、歩きながら飲めないんじゃないの?」
「実はそうなんです。」
「無理しなくていいのに。」

ほら、と貴志はペットボトルを取り上げる。
エレベーターに乗ると、真奈から密やかなため息が聞こえてきた。

「どうしたの?」
「あの…私、ホントに大人っぽくなくて…。貴志さんに恥かかせていないか、心配になってしまって。」

「何言ってるの。考え過ぎ。今日も、品があるって褒められてたでしょ。成嶋さんや、葵さんは嘘つかないよ。僕も。真奈、僕の判断が信じられない?」
「いえ。ごめんなさい。」
「おいで。真奈が子供なんかじゃないことを証明してあげる。」

貴志は手を繋いで、部屋に入り、そのまま真奈を壁に押し付けた。
「…あ…」
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