アタシと秘密の王子さま
「柔道界のアイドルに会えて嬉しいのはわかるけど、もうすぐ式が始まるみたいですよ」
静かだけど、すごみのある声で彼が言った。
牽制してるみたいだ。

声まで素敵なんて、ズルくない?

ああ、でも…
この人も、昔のあたしを知ってるんだ。
なんだか嫌だな…

「ありがとうございます、転びそうだったので、助かりました」

努めて冷静を装って、お礼を言った。
でも、整い過ぎた顔を見ることができず、代わりに顎のあたりに視線を置いた。

「小林あかねと申します、よろしくお願いしま
す」
「鳥越賢です。よろしく」

ずっと出された右手を、反射的に握る。
な…に…!?

思わず、彼、鳥越くんを見上げた。
彼もまた、驚いたような表情で、あたしを見ている。

握手をした瞬間に感じた、あの衝撃はなんだったのだろう?
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