今夜はずっと、離してあげない。



もうそろそろ戻るね、とそそくさと退散していった千井を横目に、なんだかなあ、と左胸を押さえる。


あの日から、よくわからない痛みが続いている。

ずきずき、ではなくて、ぴりっとした痛み。
ちょっと電流が流れたみたいな微量なもの。

でも、確実に痛い。


成長痛、の、はず。前も成長痛で胸が痛くて、あかねさんに心臓痛いって言ったら、目をキラキラさせて恋の病?!なんて勘違いされて─────



…………、………ん??


え、っと、あの、時は、男子と関わりなんかなくて、胸の成長痛ってことになったけど、え??

まって、まってまって。



「真生、そろそろ移動しよ。次美術室」

「あ、うん……」



美術の教科書と筆箱を持って、美術室に向かう途中も、悶々としたまま。


いや、え、ん??

なに、どういうこと?


なんでこんな時に、伽夜の顔ばっかり頭の中に浮かんでくるの??


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