今夜はずっと、離してあげない。



なんでしっくりくるのか、詳しくはよくわからないけど。

この人がいて、いまのやさしい伽夜がいるんだなっていうことは、深く納得できた。



「……いいから、早く座って。あんまり長話するつもりないし。このあと予定も入ってるから」

「そ、そうなの?!それを早く言ってよ!すぐに、いやもう秒で終わらせよう!」



伽夜のいつもよりも素っ気ない言葉に、お母さまはわたわたと私たちとは反対の席に落ち着いて、注文を伺いに来たウェイターさんには、お水だけで大丈夫です、と断っていた。


そんなお母さまを尻目に、伽夜にこそりと相談をもちかける。



「あの、伽夜。お墓参りは何も今日にこだわらなくても……。いつでもいけますし」

「今日じゃないといつ行くんだよ。真生は隙あらばシフト変わったりコロコロ予定変更すんだから、ちゃんと休みが決まってる今日に行くべきだろ」

「いや、でも……、……はい、わかりました」



最後にぎろりとひと睨みされてしまえば、私に残された道はおとなしく頷くほかない。


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