今夜はずっと、離してあげない。



「我慢できなかったあなたが悪いと思うんですがね。……これ、あげます」



レジ袋に入っていた、コンビニで買ったほかほかの肉まんと、バイト先でもらったお水を手渡す。


肉まんはいまでもついついクセで買ってしまうので、夕ご飯がわりに食べようと思っていた代物。


まあ、これがなくなったからといって、私はお腹を空かせたまま明日の朝をむかえることはないので大丈夫だろう。



「あ、あと、あんまりここにいすぎると補導されますよ」

「……補導されないように頑張る」

「それと、明日からまた一段と冷え込むみたいなので、お腹鳴らすのに懲りたらサッサと帰ったほうが身のためだと思います」

「……お前、意外と根に持つタイプだろ」

「さあ。どうなんでしょう?」



くすくす笑いながらいうと、ジトッと睨まれてしまった。

そんな不思議な不良少年に、ぺこりと会釈をして、空になったレジ袋を提げて今度こそ立ち去った。追いかけてくる様子もない。


さあ、これで今年も春の通例行事である出会いと別れは済んだ─────そう、思っていたんだ。


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