もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「行ってきます」
 玄関を出かけると、
「待って、待って、明緒(あきお)ちゃん」
 母さんの声が追いかけてきた。
 ちらっとふりかえると、その手には大きなゴミ袋。
 ジョーダンじゃない。
 聞こえなかったふりでドアを開ける。
「行ってきます!」
 うしろ手にバタンとドアを閉めて門にダッシュ。
 ガチャンと開けると、
「あっ……」
「うす!」
 今度あたしの足を止めたのは、門柱に寄りかかって立っていた慎吾。

 あぜんとしているうちに、うしろで母さんがドアを騒々しく開く音がした。
「んも! 明緒ちゃんてば。待ってって言って――――あら?」
「…ちわっ。ゆうべは電話でどーも」
 慎吾があたしの頭の上で、ぺこっと頭をさげた。
 ばかやろう。
 良い子ぶって、あいさつなんかするな。
「あら! やだ。まあまあ、慎吾ちゃん? 慎吾ちゃんなの?」
 ほらみろ!
 図に乗って話しかけてくるだろが。
 サンダルをつっかけた母さんが小走りに寄ってくる。
「あらあらあら。どうしたの、慎吾ちゃん。明緒のお迎え?」
「あ? いや、ちょっと…」
 ちょっと、なんなんだ。
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