惚れたら最後。
「はあ……」



凛兄が部屋から出ていった後、こりゃ親父に琥珀の存在が知れるのも時間の問題だなとため息をついた。

視線を落とし、仕事用のスマホを見ると梟から返信が来ていた。

画面に映し出された文字列を読みその意味を理解し、驚きが声となって飛び出た。



「は?そりゃ無理だろ。“あいつら”とは誓約がある」



梟から届いたのは、とある『提案』だった。

だが俺の一存では決めかねることだ。

常識的に考えて不可能だし、その提案を否定する返答をした。

その後梟から返信はなかったがしばらく考え込んだ。



「親父がこの提案を許すか?いや、十中八九、拒絶するだろう。
できれば今後一切関わり合いたくない連中だ。
だがしかし、それしか方法がないのなら……?」



おそらくここが分岐点だと絆は感じた。

組の存続をかけて黒幕の解明を急ぐのなら迷っているヒマなどない。



『“奴ら”が半グレの迷惑を被っているか調べて欲しい』



それだけ新たに依頼し、憂雅がマンションに帰ってくると同時に事務所を後にした。
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