惚れたら最後。
“非道の覇王”とさえ呼ばれる男だ。

裏切られることを予測しておくべきだった。



「にしてもアホやなぁ、まんまと騙されるなんて」



投げかけられた言葉に絶望を覚えたが次の瞬間、望月は男たちに分からないよう、私に向けてウィンクをして笑って見せた。

その合図に一気に力が抜けた。

ああ、この男はこちら側の味方なんだと。

勝機を取り戻し、安堵して思わず泣きそうになってうつむいた。

自分は間違っていなかったんだ、これまでの苦労が報われた気がした。



「こーんな分かりやすい罠に引っかかるなんて」



そうとも知らず、池谷は望月の後ろでニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべている。



「こんなところに来たら、逃げ場なんてないことくらい分かってるやろ?」



望月の発言は私にではなく、間接的に池谷に向けられていた。

そうとも知らず余裕ぶっている池谷に、西の覇王はついに牙を剥いた。
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