ハツコイぽっちゃり物語

イルカのショーを見終えた後、ちーちゃんがワゴンで販売されているクレープが食べたいと言い出したのでみんなで食べることになった。


近くのベンチでゆっくり食べようと先輩が言い出し、続いてちーちゃんが2人は席で待っててと指をさして、なぜか葵生先輩を連れて行ってしまった。


ベンチにぽつんと座る私たち。
人ひとり分空けて隣に座った恋ちゃんが暫くして口を開いた。


「凄かったな、ショー」

「そだね。可愛かったし」


再び訪れる沈黙。


今までにないくらいの静けさに思う。
多分久しぶりに話したからだと。
幼馴染と久しぶりに話すってこんなにも緊張するんだなぁ、とも思った。


……なんで緊張なんかしてるんだろう。
幼馴染なのに。前まで普通に話せていたのに。

……変なの。



「千桜」



名前を呼ばれた瞬間飛び跳ねてしまうくらい心臓の奥が震えた。
恋ちゃんが私を呼ぶ声は相変わらず優しい響きで、懐かしく感じる。


「あの時は、ごめん」


目が合って、それから頭を下げる恋ちゃん。
顔を上げる仕草がスローモーションに見えて思わず見惚れた。


……あれ?恋ちゃんてこんなにかっこよ――っ。


私は何を考えてるんだ。なに『かっこいい』って。てか、何ドキドキしてるの私。


そう、これは久しぶりに話したから。そうに違いないんだよ。かっこいいって思ったのも久しぶりにちゃんと顔を見たから……。

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