ハツコイぽっちゃり物語
「あの約束も忘れてるんだろーなぁ。俺はずっと覚えてるのにさ」
季節は春だった気がする。あたたかい日。
幼いながらよく言うよ俺。しかもずっと覚えてるのも気持ち悪いよな。
ま、忘れる方が当たり前か。
「千桜のばーか。俺はずっと千桜のこと好きだって、」
「……れん、ちゃん」
「っ!?」
ドキリと胸が騒ぐ。
え、やば。いま目合った……。
うっすらと開けた瞳は俺を捉えているのか分からない。でもこっちを見ていることは間違いない。
試しに呼んでみたけど返事はない。
いつの間にか閉じられている瞼に緊張の糸が切れて胸を撫で下ろした。
はあ〜〜……よかった……。
聞かれたかと思った。よかった寝ぼけてただけで。聞かれてないよな。
もう一度よかったと一息つく。
もう寝よ。起きたら神社だし、もう一晩泊めてもらうんだし。
あーこんなに家に帰りたいと思ったのは初めてだ。
やっぱソファで寝ればよかった。
だってさー、こんなかわいい寝言聞いたら俺の理性だってギリギリだよ。好きな人と一緒の部屋っていうのもアレだし。