ハツコイぽっちゃり物語

ありがとう


そして金曜日。


ちーちゃんは恋ちゃんと変わらず、偽装の恋人を演じている。
明らかに嫌な顔をして手を繋いで教室を出ていくちーちゃんを見送った。



『霧山にはまだ千桜たちが付き合ってると思わせとけば良くない?』


と言ったのはちーちゃんで、それに合わせて私もちーちゃん達は偽装の恋人だと思っていないフリをしているわけだけど、


公言してからは毎日嫌な顔をするから本当に嫌なんだなと笑ってしまう。
あの時も、あの時も、あの時だって心の中ではすっごく嫌な顔してたんだなあ。


ふぅと息を吐く。
気持ちを整えるみたいに。



「千桜ちゃん行こー」


晴菜ちゃんに呼ばれて一緒に図書室へと向かう。
久しぶりの図書委員に胸が踊るけれど、少しずつ緊張していく。


やっぱり先輩に久しぶりに会うと思うとドキドキする。
元気かな?


そう心の隅で思いながら晴菜ちゃんと談笑して足を進めていくと「あっ」と前から懐かしい声が聞こえた。


図書室前に立ってドアに手をかけた葵生先輩が私たちを見て手を振っている。


晴菜ちゃんは「お久しぶりです〜」と手を振って、私はペコっと会釈をした。


……なんか言葉ひとつでも零したら泣きそうだった。


先輩の優しい笑顔にほっとしたんだ。
本当は不安だった。
私と顔を合わせたら嫌な顔をするんじゃないかって。
だって、先輩には嫌な思いさせたから。
本当は私に会いたくないんじゃないかって思ってしまった自分が恥ずかしくて、情けない。


グッと堪えた感情を出さないように深く息をつく。
晴菜ちゃんの後に続いて図書室に入ると、先輩と目が合った。

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