ハツコイぽっちゃり物語

「千桜見すぎ」

「あ、ごめん」

「いや、別にいいけど。なんか分からないとこあった?」


そう聞くと恋ちゃんは何度かシャーペンを回した。


私は首を振って「大丈夫」と答えて数学と向き合う。


ひたすら問題を解いていきながら頭の片隅では恋ちゃんの様子を振り返る。


こんなにべったりなのは初めてだ。
行きも帰りもちゃんと私を待ってるし。
私に触れる回数も増えた。

……不思議でしようがない。



――ツン。



ほら。

その反動で顔を上げると恋ちゃんと目が合う。



「眉間にしわ寄せすぎだし。……どこ。教えてあげよっか」



そう言うと身を乗り出して私に近づく。
ふわっと香る恋ちゃんの髪の匂い。
シトラスのその香りが私は好きでつい癖で嗅ぐ。


彼は気付いていないみたい。
私のノートを見ながら「全部合ってるじゃん」なんてブツブツと言うから、そりゃそうだと思いクスリと笑みをこぼした。

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