ハツコイぽっちゃり物語
お会計を済ませた私たちは葵生先輩に言われて少し待つことになった。
クーポン券は本当に使わなかった。
レシートにはちゃんと割引きされていることが記載されていた。
店長こと、先輩の叔父さん(名前は葵生友幸さん)からも『また来た時に使ってね』と言われて今は大事にお財布の中に入っている。
待っている間、ちーちゃんと「なんだろうね」と話していると暫くして私服姿の先輩が現れた。
紺色の7分丈シャツにカーキ色のパンツ。胸元にはウエストポーチが斜めにかけられている。
シンプルな格好なのにこんなにもお似合いだとさぞ洋服たちも大喜びなんじゃないかな。
ああ、もう好き……。
私服姿の先輩がかっこよくって堪らずちーちゃんの顔を見ると、彼女ははいはいと呆れたように笑った。
「ごめんね待たせちゃって。一緒に帰ってもいい?」
今日はこれで終わりなんだ、と爽やかな笑顔で言う。
こくりと頷くと、「ありがとう」と言って私の隣に並んだ。
ちーちゃん、私、先輩の順で並んで歩く。
私よく3人でどこかに行くっていうときは、大抵真ん中にいるんだけど、こんなに緊張することなんてあるかな。
なんだかあまりにも近く感じて若干ちーちゃん寄りになる。
その様子に気付いたのかちーちゃんが小声で「なんでこっち寄ってくんの」と笑うけど、
「笑ってる場合じゃないよ」とこちらも負けじと小声で言い返した。
ほんとに笑ってる場合じゃないよ。
近いんだって本当に。
先輩の香りにクラクラしちゃいそうだし、私ものすごく汗かいてきたし、心臓うるさいし。
ひーん、と心で泣く。