After the Rain
映画はミステリーということもあって、子どもの姿はどこにもなかった。僕たちと同じくらいの恋人が数人と少し歳上の人が多かったと思う。

映画はとても面白かった。でも、隣で楽しそうにする志帆がまた元カノに見えてしまう。僕はいつからこんな最低な人間になっちゃったんだろう……。

映画が終わって映画館を出ると、もうお昼を過ぎていた。でも、僕も志帆も食欲はなく、ブラブラと傘を差しながら街を歩く。

「映画、面白かったね」

「うん、すごく面白かった」

そんな会話をしていると、雨がピタリと止んだ。どんよりと重い雲が嘘のように少しずつ消えていく。僕たちは傘を畳み、空を見上げた。虹が薄っすらと見えている。

「覚えてる?二人が初めて会った時のこと」

志帆が僕を見つめ、言った。僕は「もちろん」と頷く。僕たちが出会ったのは雨上がりの公園だった。あんな偶然の出会いを、幸せを手にした人たちは「奇跡」と呼ぶのかもしれない。
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