Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編



「また来たのか……」

深夜、いつも通りに午前様になった仕事帰り。住居のレジデンスで、真宮社長……もとい。レイ王子はうんざりした様子だったのも無理ないこと。

「ですよね!いい加減自分たちの国なのに他力本願はやめて欲しいですよね~」

電気ケトルで沸かしたお湯を、それぞれのカップ麺へ注ぐ。社長はこのところ塩味がマイブームらしく、塩焼きそばだった。
とはいえ、ぼくもサッ○ロ一番の塩だけど。
来日した時から変わらぬ美味しさだから仕方ない。

「お湯切りくらいは自分でお願いしますよ!」
「それくらい自分でやる」

(わ~不機嫌を絵にかいた渋面ですねえ)

やはり、レイ王子に祖国の話題は禁句だ。

無理もない……
ミルコ女王と親子とも常に命の危険に晒され続け、王子が3つの頃には父親が身代わりで死に、王子も生死をさ迷うほどの大ケガをした。それがきっかけでミルコ女王は退位へ追い込まれ、日本へ命からがら亡命したんだ。

日本人だったぼくのお母様の伝(つて)を伝って……。

たった3歳でも、忌まわしい記憶はハッキリと残る。
あんな扱いをしておきながら、助けろとは。冗談にしてもたちが悪い。

とはいえ、年商何十億の会社社長で何億もする6LDKのマンションに住みながら、こんなアラフォー独身男とわびしく夜中にカップ麺とは……。

ちと悟りそうになりますわな。


< 3 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop