雨は君に降り注ぐ

「結希はさ、一ノ瀬のことが、好きなんでしょ?」

 私は、小さくうなずいた。

「工藤くんのことは、言い方変だけど、眼中になかったんでしょ?」

 私は、力なくうなずいた。

「工藤くんのことを、これから好きになる可能性は、ゼロに近いんでしょ?」

 私はうなだれた。

 そうだ、その通りなのだ。
 あまりにも、図星だ。

「だったら、工藤くんに期待を持たせるようなことなんか、しちゃダメだよ。」

 理子は、声を優しく聞こえるように調節して、私に話をしている。
 それでも、彼女の言葉の1つ1つが、私の心にグサリと刺さる。

 自分のことが、どうしようもなく不甲斐ない。

「工藤くんにも一ノ瀬にも、失礼になっちゃうんじゃないかな。」

 そうだよね。
 私、本当、最低…。

「だから、今度会った時に、しっかり自分の気持ちを……ゆ、結希?」

 私の両目から、熱いものがこぼれ落ちる。

 まただ。
 また泣いてる。

 私って、こんなに涙もろかったっけ?

 私の様子を見て、理子が動揺している。

「いや、まあ、最終的にはどうするかなんてさ、結希が決める話だし、うちがどうこう言えた立場じゃないんだけど、」

 理子を、困らせてしまっている。

 何とかしなくちゃ。
 泣き止まなくちゃ。

 そう思うのに、涙は思うように止まってはくれない。

「ごめん。うち、言いすぎた……。」

 なんで謝るの。

 理子の言っていたことは全部本当のことなのに。
 だから、謝る必要なんてないのに。

 と、始業を告げるベルが鳴った。

 理子は何も言わずに、自分の席へと戻っていった。
 私も、涙をぬぐいながら、理子とは少し離れた席を選んで、座る。

 いつも通り、講義が始まる。
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