雨は君に降り注ぐ
何も言い返せない私を鼻で笑って、新川先輩は続ける。
「もう分かったでしょ?いじめの根本的な解決なんて、誰にもできる話じゃないのよ。あなたたち、もう帰りなさい。楓のような目には、会いたくないでしょ?」
新川先輩の言葉には、妙な説得力があった。
…その通りかもしれない。
そう思い始めていた。
私たちがやっていたことは、全て無駄。
いじめの解決なんて、そんな大それたこと、私なんかにできるわけがない。
結局は、きれいごとを並べていただけじゃないか。
と、理子の声が聞こえた。
「こんなことをして、楽しいんですか?」
新川先輩は、しばらく黙っていたが、やがて、ふっと意地悪そうな笑みを浮かべると、
「ええ。楽しいわよ。」
と、言った。
「うちは、いじめは、やっぱり、間違ってると思うんです。それで誰かが救われるわけでもないし、いじめられてる方は、ただただ辛いと思うし。」
理子の声は、震えていたがしかし、力強かった。
「だから、きれいごとに聞こえるかもしれないけど、うちは、いじめを解決させたいし、うちのサークルの大切なメンバーにいじめなんてしてほしくない。」
親友の言葉は、何よりも頼もしい。
私は改めて、理子という友達を、誇らしく思った。
「私もそうです。高井先輩には傷ついてほしくないし、新川先輩には、こんなことをしてほしくない。だからつまり、何が言いたいかというと、」
1度、深呼吸。
「いじめ。もう、止めませんか?」