雨は君に降り注ぐ

 1秒1秒が、とてもゆっくりと感じられる。
 まるで、私たちの周りだけ、時間が止まってしまったような。

 一ノ瀬先輩の唇が、離れる。
 と思ったら、次の瞬間、もう1度私の唇がふさがれた。

 顔が熱を帯びていく。
 心臓の音が大きくなる。

 唇と唇が重なっているだけの、優しいキス。

 それでも、私にとっては初めての経験。
 しかも、相手は一ノ瀬先輩。

 私は今、一ノ瀬先輩と、キス、している。

 甘い。

 どこかで読んだ小説に書いてあったたとえ。

 甘い。

 ファーストキスって、本当に甘いんだ。

 雪のような口どけで、苺の味がする。
 それとも、一ノ瀬先輩とだから、こんなに甘くて優しい味がするのかな…?

 一ノ瀬先輩の唇が、再び離れた。

 左頬に、優しいキス。
 右頬に、甘いキス。
 おでこに、酸っぱいキス。

 そして唇に、とろけるようなキス。
 長い長い、濃厚なキス。

 一ノ瀬先輩が、私の目を見つめる。

 その顔は、若干ではあるが、赤みを帯びていた。
 多分私の顔も、同じくらい、赤い。

 突然、一ノ瀬先輩の腕が、私から離れた。
 と言うより、飛びのいた…?

 一ノ瀬先輩は、自分の唇に自分の腕を当てると、上目遣いでこちらを見た。

「ご、めん…。驚いた?」

 震える声で、そう聞いてくる。

 どうやら、先輩はテンパっているようだった。
< 187 / 232 >

この作品をシェア

pagetop