雨は君に降り注ぐ
2章  夏を駆ける


「練習、試合…?」

 すっとんきょうな声が出た。

 工藤くんは、爽やかに笑った。

「そ。練習試合って言っても、対戦相手は、あの嵐が丘大学なんだ。」

 嵐が丘大学。

 言わずとも知れた、バスケの強豪校。
 全国優勝6回の実績を持つ、バスケのエリート集団。

 そんなところと、練習試合?

「今回の練習試合は男子だけだから、結希ちゃんにはあんまり関係ないんだけどさ…。」

 工藤くんが、右手で首の後ろを押さえる。
 照れているときの、クセ。

「つまり、その試合に、工藤くんが出るんだね?」
「そうなんだ、それで、」
「じゃあ、私、観戦に行くよ!」

 私がそう言うと、工藤くんは首の後ろを押さえたまま、目を丸くした。

「え、いいの?」
「うん!応援するよ!」

 工藤くんは、全く邪気のない笑顔を見せた。

「本当?嬉しいなあ。じゃあ、今度の日曜日だから、よろしく!」
「工藤ー、いつまでサボってんだー。」

 涼介先輩が、工藤くんを呼んだ。

「じゃあ結希ちゃん、また。」

 そう言うと、工藤くんは去っていった。

「あんなに工藤くん優しいのに、もったいない。」

 ふいに、後ろから声がした。
 振り返ると、理子が立っていた。

 手には、スポーツドリンクを持っている。
 それを私に差し出して、理子は言った。

「はい。水分補給はしなきゃだめだよ。」
「ありがと、マネージャー。」
「にしても、そんなにいい男なんだ?」

 理子は、私の肩に肘を置いて、言う。

「その、一ノ瀬って男はさ。」
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