雨は君に降り注ぐ


結希(ゆうき)~、おは~。」

 のんきな声。
 なぜか、この声を聞くと安心する。

 私は顔いっぱいに満面の笑みを浮かべて、声のした方へ振り返った。

「おはよ、理子(りこ)。」

 そう言うと、彼女もまた、顔いっぱいに満面の笑みを浮かべて、私に抱き着いてきた。……と、言うより、飛びかかってきた、かな?

 おかげで、私はバランスを崩し、理子と一緒に、廊下に大の字に寝転ぶ形になってしまった。

「ちょ、ちょっと…」

 そばを通りかかる学生たちが、何ごとかとこちらを見ている。

 注目の的。

 ああ、恥ずかしい。
 自分の顔が赤くなっていくのがよくわかる。

「ちょっと理子、ここ、大学だよ?」
「わかってるって。」

 理子はいたずらっぽく笑うと、私の体の上から起き上がった。

「ちょっと結希、いつまで寝てんの?早く行こうよ。」
「どの口が言ってんのよ…。」

 私は不機嫌な顔をつくりながらゆっくりと起き上がって、爆笑している理子と肩を並べて、教室へと歩き出した。

 彼女の名は、小澤(おざわ)理子。

 私と同じ1年で、言うまでもなく、私の友人。
 
 きっかけは単純。
 大学での講義の初日に、隣の席に座っていたのが、理子だった。

 屈託のない、愛らしい笑顔で積極的に接してくる理子を見て、私は心の底から、この子のことをもっと知りたい、そう思った。

 そんな願いが通じたのか、私と理子は、瞬く間に打ち解け合い、知り合って2週間にして、お互いを『親友』、と呼び合える仲にまでなった。

 理子は、明るくて優しい子だ。
 顔も、とても可愛らしい。

 顔もスタイルも平凡で、性格も内気な私から見れば、理子は輝いて、私には眩しすぎる存在だった。

 そんな理子が、私の友人。

 これは、人類の歴史史上、あ、いや、それはさすがに大げさ……私の18年の人生史上、1番の奇跡と言えよう。

 人に自ら関わろうとすることが苦手な私に、理子が初めて話しかけてくれたとき、私がどんなに嬉しかったか。
 理子が私にとって、どれほど大切な存在か。

 そのことは、照れくさくって、本人にはまだ言えていない。
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