雨は君に降り注ぐ
ボールをドリブルして、工藤くんが走り出す。
しかし、すぐに嵐が丘にとられる。
相手選手は、ゴールに向かってボールを放った。
まずい。
今、相手にシュートを決められたら。
得点をさらに引き離されたら。
ボールはゴールネットに向かって、きれいな弧を描いて飛んでいく。
が、リングにはじかれた。
そのボールをとって、涼介先輩が走り出す。
残り、23秒。
選手の間を、軽やかに走っていく涼介先輩。
その前に、嵐が丘のキャプテンが立ちはだかった。
2人はしばらく見合う。
残り、14秒。
相手がボールに向かって手を伸ばした。
涼介先輩は、とっさに避けようとするが、
ダメだ、とられる。
相手の方が、一瞬早い。
私がそう思った、まさにその時。
「工藤っ!」
涼介先輩が、後方にボールをパスした。
その先には、工藤くんがいる。
残り、7秒。
工藤くんは、相手ゴール付近の、スリーポイントラインにいた。
ゴールネットまでの距離、およそ22m。
まさかこのタイミングで、後方にパスを出すとは、誰も思わない。
工藤くんはノーマークだった。
でも、22mはさすがに遠すぎる。
いくらなんでも届かない。
残り、3秒。
それでも工藤くんは、シュートモーションに入った。
ひざを曲げて、ばねを使って、バスケットボールを投げる。
ボールは、大きな、きれいな、弧を描いて、ゴールに、入、
試合終了を告げるブザーが、鳴り響いた。