愛は惜しみなく与う【番外編】
「お友達の女の子。あの子お名前なんて言うの?」

「杏だよ。金髪のやつだろ?」

「そう。杏ちゃんって言うのね。朔の彼女?」

「ちがうよ。杏は泉の彼女だよ。あ、泉ってのは……」


話してないことばかりだ


そして聞いてほしいことばかりだ



「杏ちゃんに言われたの。逃げるなって。朔の全部を受け止めろって言われた。朔の母親だって胸を張って言いたいなら…ちゃんと朔の話を全部聞いて、悲しいことも辛いことも楽しかったことも全部…受け止めろって。

沢山のこと乗り越えたんだね。あの子が……いろいろな経験をした朔だから、今よく笑う子になったんだって……教えてくれたの」



……ばか

杏のばか

やめろよ、ほんと



「朔?」


「杏の言う通りだよ」


素直に話せる気がする


「俺すげぇしんどかった。お母さんがいなくなって…クソ親父にごみみたいな扱いされた。後から来た女と子供にも、罵られて痛めつけられて、毎日死にたかったよ。ほんと、しんどかった」



杏は……俺が素直に話せるように


お母さんが…俺を受け止める準備ができるように


先に、気持ちを届けてくれたんだな
< 407 / 645 >

この作品をシェア

pagetop