やり直せる?

彼女と離婚してから
両親からも
あんなに頼りにされていた会社からも
叱られた。

大事にしないから····
放置しすぎですよ·····
一人で偉くなったとでも····

人に言われないと
  わかっていなかった。

それでも、
会社は実績を出せば
頑張れば、評価も返ってくる
独り身だから仕事ばかりだ。

それでも両親は、
老いていく息子を不憫に思い
たまには、帰ってきなさい
ご飯用意して置くから·····と。

食事もままならず
あんなに重かった体も
独身時代の体型へと変わって行った。

家は、売却して
小さなマンションを購入した。
老後もここにいる。

会社にも近いし便利だ。

マンションを購入しても
余ったお金は、自分に少しと
綾華と紗英に分けて綾華に渡した。

感謝の気持ちのつもりだ。
こんな風にならないと
何もわかっていなかった俺に
「違うよ」と、教えてくれた。

だが
紗英に渡しても要らないと
言われるのが、わかっていたから。

会社で定年
定年延長までして
あとは、ゆっくり凄そう。

一人で旅行にでも
行ってみたい、と思えるようになった。
料理や洗濯、そうじも
出来るようになった。
紗英のようにはいかないが。
アイロンだって上手になった。

全てが落ち着いてきた頃に
紗英と再会····穏和だ····

この男性が、紗英が好意を
寄せている人物だと
なんとなくわかった。

背も高くて、良い男だ。
彼が、公園に入ってきたとき
回りの女性達が
自分の相手より彼を見ていた。
彼は、そんな視線も気にせずに
キョロキョロして
紗英を目にとめると
にこりとして足早に向かってきた。

紗英を大事に····大切に····
思っているのが見てとれた。

紗英が男性を
たかし、と呼んだ時に····

あ~·····俺にはなかった····
と、勝手に酷く落胆した。

そうさせてきたのも
自分だと、改めて思い知った

本当に情けない夫で
  済まなかった······

心の中で詫びた。
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