HEAVEN's Door

Dear Mutsumi

−睦海へ



今日は12月24日。

君が言ってた、僕が事故する日。

今は午前4時20分。



僕が君と一緒に過ごす夢を見たのは昨日の夜だった。

おかげで今日は一睡もしてない。

物凄いリアルな夢でさ。

目覚めてから慌ててバイクのメーターを見たら。

距離が延びてるんだよ!

…やっぱり、夢じゃないのかな?



僕が死ぬと代わりに睦海が生まれるという話だから。

一生出会わない父娘を不憫に思った神様が。

一瞬だけ僕達を引き合わせてくれたのかもしれないね。



睦海、君は僕に死なないで欲しいと言ったけど。

僕も睦海が生まれてくるなら死にたくないよ。

君と一緒に過ごせたら。

どれだけ楽しいだろう?

バイクの事もたくさん、教えられるのにな。



でも人の寿命って何をどうあがいても決まっていると思う。

ならば。

僕は今日、真由ちゃんを迎えに行く時はバイクも使う。

好きにさせてもらうよ。

ただ、謝らないといけないのは。

僕が今日、する事が。

その後の真由ちゃん、そーちゃんに一生、背負わせないといけない事に繋がる事。

そして睦海が大きくなって、本当の父親の存在を知った時。

耐えられない事が起こるんじゃないかと思うと。

僕がその時に生きていなくてごめん、本当にごめんね!って。

謝っておくよ、ここで。



僕は今日、この手紙を本に挟んで図書館に置いておく。

もし僕が死ななかったら年明けにでも回収するし。
その時はそれでただの夢だった、って笑えるから。

それが出来なければ、睦海、君が回収してくれるって信じてる。



夢の中では本当に少ししか君と一緒に過ごせなかったけど、楽しかった。

ありがとう。

あの、抱きしめた時の温もりは忘れないよ。

そして僕は睦海の傍にいつでもいるから。



パパやママ、弟、妹と仲良くね。

あ、あと、光とも。



睦海の幸福を祈っているからね!



拓海−



追伸:同封した手紙、みんなに渡しておいてね!!
< 60 / 79 >

この作品をシェア

pagetop