カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

彼から一瞬離れてベルトをジャケットと同じく鏡台の椅子に掛ける。戻ろうと振り返るとすでに眠っており、しかもワイシャツのボタンがすべて外れ、片腕が脱げている状態に変わっている。

器用だな、と思いながら、彼のワイシャツも最後まで脱がせ、同じ場所へ掛ける。

最後に掛け布団をテーブルクロス引きのように彼の体の下から引き抜いて上から掛け直し、どうにか一晩眠れる状態に整った。

本当はよほど酔いがつらかったのだろう。
今は安定した寝息を立てて眠っている。

私も、自分の突拍子もない暴露を一旦おしまいにできてちょうどよかった。このままではまるで私が死んでしまうかのような勢いで心配されそうだったから。

でも、うれしかった。課長が私のために力になってくれると言ってくれたことで、少し気持ちが楽になった気がする。

次はきちんと検査の結果が出てから、改めて話そう。

私は鏡台の上のメモ帳とボールペンを借り、明日の朝起床した課長への手紙をサラサラと書く。

【おはようございます。私は先に帰ります。昨夜のことは秘密にしてください。 星野】

それをサイドチェストの上に残し、私は荷物を持って立ち上がった。

「……おやすみなさい、課長」

ーー私はやっぱり、課長のことが好きだ。
胸に残る甘い余韻を感じながら、ホテルの部屋を後にした。

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