身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~



 ベットに腰を掛ける桜門の前に立った文月は、真剣な表情のまま桜門にそう伝える。
 そして、まだ白銀に触れられた感触が残る手をぎゅっと強く握りしめる。そこに彼の手はもうないが「大丈夫です。まかせてください」と伝えるように。

 白銀が依頼を文月に託した後、すぐに病室に医師と看護師が入ってきた。その後にはスーツ姿の男性が何人か駆け込んでくる。病室に居た文月を見て、驚いた顔をしていた。話を聞くと、ドール会社の人のようで、白銀とは会社仲間だという事だ。文月は倒れていた白銀をこの病院まで運んだという事で何とか誤魔化した。が、その後は緊急処置をすることになり医師や看護師以外は病室から退室するように言われてしまったのだ。「お礼をしたい」という社員の人達から逃げるように病院を後にした文月だったが、その後はもちろん白銀と話せる事もなかた。

 桜門ならば、白銀の事をよく知っているはずだ。
 彼は1年前から桜門の元を訪れていると話をしているだろうと思ったのだ。
 桜門はただ闇雲に身代わりの依頼を受けているわけではないのだから。


 「座るといい。短い話ではない」
 「はい」



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