身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~



 高校の時代の姫白と黒夜は、仲が良かった。
 彼が文化部部長であり、姫白は運動部部長だったのだ。黒夜は美術部であり、姫白は新体操部だった。
 この高校ではどの代でも運動部と文化部は仲が悪く部費や文化祭の場所割りでトラブルになる事が多かったのだ。
 けれど、2人がお互いの代表になった時に「俺達は仲良くやろうな」と言ってくれたのだ。
 部費も夏は文化部が少なくもらい、大会で忙しい運動部を応援し、秋は逆にすればいい、など黒夜は様々な提案をしてくれ生徒会や先生方を驚かせた。そしてその年は大きなトラブルもなく部活行事を終わらせる事が出来たのだ。
 元々かっこいい黒夜はモテていたが、文化部長を引き受けた事で更に人気者になった。

 そんな彼の2人で仕事をする姫白は羨ましがられる事が多かったし、姫白自身も幸せだった。


 そんな青春時代を思い出しながら、旧友とお酒を飲みながら話していた。


 「新体操の妖精さんは、やっぱり美人だよね」
 「そんな事ないよ!もう運動止めたから、体型も変わっちゃったし」
 「そんなに細いのにー!もう新体操とかやってないの?」
 「うん。大学でやめてしまったの」
 「もったいないー!高校では全国大会でも入賞してたのに」
 「昔の話だよ」


 高校時代の話をされると、姫白は胸がチクチクしてしまう。
 昔の栄光など、大人になっても何の役にも立たないのだ。新体操の妖精なんて呼び名も、今となっては恥ずかしいだけだった。


 「ちょっと酔っちゃったから、外の空気に当たってくるね」



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