身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
また沈黙が続く。
いつものような、静かな2人だけの時間。
けれど、それを姫白はそれを止めようと誓ったのを思い出した。次に彼にあったら、伝えよう、そう決めてたのだ。
姫白はゆっくり起き上がろうと、左腕に力を込めた。すると、「大丈夫か?」と彼の手が伸びる。黒夜のがっしりとして、温かい腕。彼の厚意に甘え、体を起こして貰う。けれど、彼の右腕を姫白は話さなかった。
残った左腕で彼の右腕に触れた。
「ごめんなさい………」
「………何がだよ」
「勝手な事して、ごめんなさい」
「何でおまえが謝るんだよ。おまえが、俺を守ってくれたんだろ?」
「………知ってるんだよね?」
「あぁ。桜門って奴に会ってきて話を聞いた」
黒夜が桜門にまで会いに行っていたのは知らなかった。けれど、それならば身代わりについての力を彼は知っているはずだ。
ならば、話は早い。
視線を逸らしたくなる。
彼の視線が鋭くならないか。憎悪の表情にならないか。少しの変化でさえ、怖かった。
けれど、それよりも自分の気持ちを伝えなければ、と彼の目を見つめ続けた。大好きで大切な、キラキラとして澄んだ彼の瞳を。
「私は黒夜の腕を守りたかった。あなたの絵が大好きだから。あなたが絵の話をしている時の顔が、絵を描いている真剣な視線が好きだったから。だから、守りたかった。………けど、それは私の勝手な願い。自分勝手な事をしたのは申し訳ないって思ってる。でも、私は後悔はしてない。私……大切な人を守れたんだから」