政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 ベッドに移動してからも何度も身体を重ね合い、彼は私の身体を抱きしめたまま眠りに就いた。

 頭上から聞こえてくる規則正しい寝息。いつもだったら弦さんのぬくもりが心地よくてすぐ眠ることができるのに、今夜はなかなか寝つけそうにない。

 今日は色々なことがあったな。久しぶりに美香と会って、弦さんの秘書の竹山さんにも会うことができた。

 一日を思い返していると、ふたりに言われた言葉が次々と脳裏をかすめる。

『未来の気持ちはわかるけど、傷つかないための予防線なんて張らないでよ。未来は誰よりも幸せにならなくちゃだめ! 私は弦さんのことを好きになってもいいと思うよ、だって未来たちは夫婦なんだから』

 できることなら、私だって幸せになりたい。弦さんと本物の夫婦になりたいよ。
 だけどそれは、今までの自分を変えないと叶えられない願いのはず。

 美香の言う通り、私は傷つかないための予防線を張っていると思う。そうすることで自分を守ってきたのかもしれない。

『本日はお見せできませんが、いつか専務の働く姿もご覧になっていただきたいものです。……きっと家とは別人で驚かれると思いますよ?』

 私が竹山さんの言う家とは別人の弦さんを知らないように、弦さんだって私のことをほとんど知らない。

 彼のことをもっと知り、そして私自身のことも知ってもらわなくては、いつまで経っても弦さんと夫婦という関係を築くことはできなよね。

 今の幸せを逃がしたくない。今以上に幸せになりたい。そのためにも今週末、弦さんに両親との関係を打ち明けよう。
 ありのままの私を受け入れ、愛してほしいから。

 仕事で疲れているのか、熟睡している彼にギュッと抱きつくと、次第に瞼が重くなってきた。

「おやすみなさい、弦さん」

 弦さんのぬくもりに包まれ、私も眠りに就いた。
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