同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「俺のところに帰ってきて」

「っ……言ったでしょ、もう私……」

「波瑠がいないとだめだ」

「…………」

どうしよう。私の気持ちは優磨くんに伝わらなかったの?

「このまま離れた方がいいって……婚約者さん待ってるよ」

「そんな人はいないよ」

「え? 政略結婚の話があるって言ってたじゃない。お父様が決めた人なんじゃないの?」

「もう婚約解消したから」

目を見開いた。

「波瑠のことしか想えないのに他の女性と結婚することはできないから、直接相手の人に断った。俺は下田と違うから」

力強い言葉と目にビクッと体が震える。

「お父様怒ってるんじゃない?」

「まあね。でもこれは俺も譲れないから」

優磨くんの顔が見られなくて目を逸らす。縁談を断った理由が私ではお父様は納得しないだろう。

「最初から決まったお相手なら裏切ることもないんじゃないの?」

「ごめん本当に……俺には波瑠だけ」

「…………」

「…………」

お互い黙ってしまう。どんなに優磨くんが悪いと思ってくれているとしても、吐かれた言葉の重みはまだ私を押しつぶしている。

「今日はもう帰るね。お金を返すのが目的だったけど波瑠の顔が見れてよかった」

「そう……」

「明日も来るね」

「え?」

「明日も明後日も、毎日来る。俺が波瑠から離れないって信じてもらえるまで」

「無理だよ。会社も優磨くんのマンションもここから遠いもん……」

「でも波瑠に会いたいから来るよ」

戸惑う私に優磨くんは「俺は本気」と囁いた。

「私は優磨くんのこと想ってないから」

出来るだけ素っ気なく、冷たい声を出す。

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