翠玉の監察医 消されるSOS
四 小さなSOS
夜が明けた。空の家族が空を探しているという情報もなく、空が放置されているのだと嫌でもわかる。

朝ご飯を食べさせた後、蘭が空を連れて空の住むアパートの近くまで行くことになった。蘭は空の手をしっかり握り、碧子たちを見つめる。

「それでは、行って参ります」

「行ってらっしゃい、気をつけて」

碧子たちに見送られ、蘭と空は歩き出す。空は昨日の元気さはなくなり、どこか怯えているような顔をしていた。

「お家、どうしても帰らなきゃダメ?」

歩いている途中、空が立ち止まって訊ねる。蘭は空と目線を合わすようにしゃがみ、言った。

「お母様やお父様がご心配しているかもしれません。なので、空さんは家に帰る義務があります」

「よくわかんない」

蘭の言い方は空にとってわかりづらいものなのだ。しかし、その目に悲しみが宿っている。

「僕にパパはいないよ。ママはいるけど、いつも僕を置いてどこか行っちゃうんだ。ママが帰ってきたら家から出ないといけないの」
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