リアル彼氏
「この人だよ」


恐る恐るスマホ画面を見せる。


鏡を見ていたマリナはチラリと顔を上げ、それから目を見開いた。


「なにこれ、すっごいカッコイイ!」


興奮してあたしのスマホに手を伸ばすので、咄嗟に引っ込めた。


ついでにメッセージ画面を閉じる。


「ちょっと、もう少し見せてよ!」


「は、恥ずかしいからダメ」


「なによそれ。それが出会った人?」


「そ、そうだよ」


あたしはコクコクと何度も頷く。


自分がくだらないことをしているとわかっている。


でも、マリナを負かしてやったのだという気持ちの方がずっと強かった。


「連絡先交換したんだ!?」


「う、うん。まぁね」


自分の笑顔がぎこちないものになっていくのがわかる。


マリナがこんなに興味を抱くとは思っていなかったから、途端に弱気になってきてしまった。


このまま誤魔化し通す自信がなくてあたしは慌てて立ち上がる。


「どうしたの? もっと聞かせてよ」


「ごめん、ちょっとトイレ」


あたしはそう言い、教室から出たのだった。
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