リアル彼氏
マリナはちょっと不服そうな顔を浮かべたが、すぐに笑顔になった。


「どんな服で行くの?」


不意の質問にあたしは瞬きをした。


「もしかして、まだなにも考えてないの?」


「え、うん、だって、ついさっき決まったばかりだし」


しどろもどろになって返事をすると、マリナは眉間にシワを寄せた。


「それでもなにかあるでしょう? 勝負服くらい、持ってるよね?」


マリナの言葉に返事ができなくなってしまっていた。


このくらい『もちろん持ってるよ』と嘘をついてしまえばいいのに、焦ってそれができなかった。


返事が遅れたことでマリナは呆れた顔になる。


あたしを見下す、あの表情だ。


「もしかして持ってないの?」


聞かれて、あたしは頷くしかなかった。


今さら持ってるよと言ってもすぐに嘘だとバレてしまう。


マリナが含み笑いを浮かべて、あたしの胸にはまた黒いモヤが渦巻き始める。


「家に帰ればなにかあるかも」


苦し紛れに言うと、マリナは大きくため息を吐き出して左右に首を振って見せた。
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